避難指示解除を前にして

1月19日、東京・高円寺のフリースペース「グレイン」で、今年最初の『原発の町を追われて』上映会とトークが行われた。30人があつまり、双葉町から埼玉県加須市で避難生活をしている鵜沼久江さんの話に聞き入った。

 「今日は一番言いにくい話をします。お金の話です」と鵜沼さん。「避難者は賠償金もらって、いい思いして」と言われているがとんでもない。われわれ双葉町民には『生活再建のためのお金』として一律100万円渡されました。世間ではもらったお金だと思われているみたいですが、借りてるだけ。それも強制的な貸付なんですよ」。

 双葉町民には精神的慰謝料として、一人あたり一ヵ月10万円が振り込まれていた時期がある。このことがマスコミで報道されるや、避難者に対する世間の目は、同情からやっかみに変わった。避難先の小中学校で子どもたちはいじめにあい、働きに出た大人たちの中には「双葉の人間が来たから仕事がなくなった」と責められた人もいる。「私は避難先で必死になって野菜を作って売って来ましたが、『賠償金いっぱいもらってるのに、なんで働く必要があるんだ』と言われてきました。ひと月10万円で、どうやって生活するんですか」と鵜沼さんはいう。

 長きにわたり全町避難を余儀なくされてきた双葉町だが、この三月、ついに双葉駅を中心に、一部避難指示が解除される。それに伴い、東京五輪の聖火ランナーが双葉町を走ることも決まった(1月21日朝日新聞)。双葉駅はかつては止まらなかった特急が、止まる駅になるのだという。

 「福島第一原発は今も危険な状態にあります。昨年夏に一時帰宅した時、排気塔の撤去作業をしていたためか、付近の放射線量が上がりました。でも町民には何の説明もありません」。避難するのも避難解除するのも、上から勝手に決められてきた。復興再生計画もそうだ。津波で家が流された海沿いの地域は「水田再生ゾーン」になっている。そこに土地をもつ人は「こんなところでコメなんて作りたくない」という。それを見越して町は、福島県外の農業法人にコメ作りを委託している。国や県が決めたことに逆えば大変なことになるから、町長も町会議員も何も言わない。国が安全だといえば日本中が納得し、帰らないのが「わがまま」と言われる。「だったら総理大臣が家族をつれて住んでみてよ。そうすれば本当に安全なんだって、国民に伝わるから」と鵜沼さんは笑う。

 会場から「どうなることが復興だと思いますか?」と質問が出た。「双葉町に帰って、農業したいんだという人がいる。じゃあ、あんたの息子は引き継いで農業やるのかって聞くと『俺の息子は帰らねえ』っていう。それじゃあ、何のために双葉で農業やるのか。次世代に引き継げない、あと十年やそこらの自分の満足のために帰るなんて。そのための除染費用を、東電が出すならいい。でもそうじゃなくて、皆さんの税金でしょ? 無駄に使わないでほしい」。

 「双葉町は地図からなくなるんじゃない?」。加須市に避難した当初からそう思っていたと鵜沼さんは言う。周囲には、双葉町民だということを一切明かさず生きている人もいる。そうすれば職場でも学校でいじめられることがないからだ。鵜沼さんは双葉町民であることを隠さず、テレビや新聞の取材にも応じてきた。いじめやオリンピックへの言及もしたがカットされ、だからこそこういう上映会が貴重なのだと、忙しい農作業の合間をぬって駆けつけてくれた。

 親戚からは「もうテレビには出ないで」と言われるが怯まない。今、何が起こっているのか現実を話し続けること、それ以外に双葉町を存続させる手立てはないと、鵜沼さんは思っている。「お金をもらったからって黙り込んじゃダメ。やましいことでも何でもない」。双葉町民へのメッセージだ。

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2020年頭のごあいさつ

あけましておめでとうございます。

東日本大震災から9回目のお正月です。徐々に年賀状に「おめでとう」と書く人も増えてきたように思います。

今年はいよいよ「復興五輪」。それに向けて常磐線も完全開通し、すべての町が避難指示解除となります。五輪と共に、福島原発事故からの復興は成し遂げられたかのように。

毎年この時期になると「帰れる場所」が増えていきます。今年の3月には双葉町の一部(双葉駅周辺)が解除になり、これですべての自治体の「全町避難」が解かれることになるのです。

あれほど「帰りたい」と言っていた人たちが、一時帰宅するたびに「もう住めないね」と諦め、違う土地に根を張ることを決める。諦め、そして踏み出す。その繰り返しだった8年余。双葉郡の復興は、そうした人々の歳月に報いるものになっているのでしょうか。

昨年『盆歌』という映画をみました。心は双葉に置いたまま、別の場所で暮らす人々。埼玉でも双葉の盆踊りが毎年行われていたけれど、ご先祖様も一緒に踊っていたのです。

その盆踊りと、双葉町の今の風景を重ねて、三分映像を作りました。

「帰れる場所」それは、もとには戻らない場所なのです。

 

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復興五輪のために避難者は犠牲に?

東京五輪を来年に控え、福島の復興は着々と進んでいるかのようにみえます。福島第一原発を抱えた大熊町も今春一部地域が避難解除し、のこるは双葉町だけとなりました。
2013年9月に「状況はコントロールされている」と言い放った安倍首相。まだまだ予断を許さない廃炉作業や、処分しきれない放射性廃棄物、それに伴う人々の不安を無理やり押さえつけ、まさにコントロールしているのが今の国の在り方のように思えます。
今、福島はどうなっているのか。この8月と9月、2度にわたって浜通りに行きました。少しでも現状をお伝えできればと思います。
地元さいたま市の公民館での学習会。興味のある方はぜひお出かけください。

【桜区平和を考える会学習会】
『福島の現状を語る』~復興五輪のために避難者は犠牲に?~

日時 10月20日(日)14時~16時
場所 田島公民館講座室(埼玉県さいたま市桜区田島3-27-6 JR西浦和駅から徒歩8分)
資料代 300円 予約の必要はありません
連絡先 090-4433-7092(小高) Email kodaka@jca.apc.org

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アップリンク渋谷での上映が決まりました

7月15日(月・祝)11午前より、東京・渋谷のアップリンクで上映が決まりました。
山谷哲夫監督プロデュース企画「11AM名画発見」の中に選ばれ、2011年から2017年にわたって記録した『原発の町を追われて』三部作102分を上映します。上映後は、第三部に出てくる双葉町民、鵜沼久江さんと舞台挨拶します。

「いつかまた起こる原発避難。その時にまた私達のような思いをされる方はどれ位おられのでしょう。人間をやめたくなる、そんな日々が今もづついています。ぜひ一度ご覧いただきたいです」(鵜沼久江)

【アップリンク渋谷】
03-6825-5503 shibuya@uplimk.co.jp
東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル1階
定員58名 全席指定 7月1日よりオンライン(上記ホームページ)か、劇場窓口でチケット販売開始

特集上映「11AM劇場 名画発見!」


一般1800円 シニア1100円(その他詳細はチラシをご覧ください)

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双葉の若者たちへ

Hさんは予備校生。高校はスクーリング制を利用して卒業したのだが、大学には行きたいという漠然とした思いはある。
咳がひどくて眠れない。朝起きられないから予備校もさぼりがちだ。精神的ストレスは他人からはみえにくい。

Hさんは小4で被災した。いくつかの避難所を転々として、埼玉に来た。避難先の小中学校で嫌な目にあって、四年前に引っ越した。そこではおそらく避難者だとか、双葉町出身だとか、友達には言ってないんじゃないかと思う。
ラクになったかと思いきや、一年で高校に通えなくなってしまう。

Hさんは私の映画に出てくれたばかりか、上映会後のトークでも自分の思いを語ってくれていた。しなやかな感性の持ち主だった彼女が背負ったものは、とてつもなく大きかったに違いない。
そんな彼女が予備校に通うため、この春、埼玉に戻って(?)来た。

彼女に「みな、やっとの思いで坂をのぼる」(永野三智著)を渡した。
この本の筆者はね、水俣出身だというのを隠してたんだよ。そう言ったとたんに彼女の眼の色が変わった。

双葉町は教育に力を入れる町で、中高生の希望者を海外研修に行かせていた。3・11後もそれは続いていて、彼女も昨年志願してニュージーランドに行った。「自分の気持ちを言葉できちんと表現できる人がいることに驚いた」。それがニュージーランドで得た最大の成果だという。

負けるなHさん。無理したら壊れてしまうくらいなら、じっくり時間をかけて考えればいい。
正直に生きて行け。
復興は長くかかる。生きている間に廃炉なんて無理だ。
その責任を回避する為政者と、ひきうけていく次世代を、私は記録したい。

故郷への望郷の念ばかりではなく、この先を生きてゆくあなたたちのことを。

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