双葉の若者たちへ

Hさんは予備校生。高校はスクーリング制を利用して卒業したのだが、大学には行きたいという漠然とした思いはある。
咳がひどくて眠れない。朝起きられないから予備校もさぼりがちだ。精神的ストレスは他人からはみえにくい。

Hさんは小4で被災した。いくつかの避難所を転々として、埼玉に来た。避難先の小中学校で嫌な目にあって、四年前に引っ越した。そこではおそらく避難者だとか、双葉町出身だとか、友達には言ってないんじゃないかと思う。
ラクになったかと思いきや、一年で高校に通えなくなってしまう。

Hさんは私の映画に出てくれたばかりか、上映会後のトークでも自分の思いを語ってくれていた。しなやかな感性の持ち主だった彼女が背負ったものは、とてつもなく大きかったに違いない。
そんな彼女が予備校に通うため、この春、埼玉に戻って(?)来た。

彼女に「みな、やっとの思いで坂をのぼる」(永野三智著)を渡した。
この本の筆者はね、水俣出身だというのを隠してたんだよ。そう言ったとたんに彼女の眼の色が変わった。

双葉町は教育に力を入れる町で、中高生の希望者を海外研修に行かせていた。3・11後もそれは続いていて、彼女も昨年志願してニュージーランドに行った。「自分の気持ちを言葉できちんと表現できる人がいることに驚いた」。それがニュージーランドで得た最大の成果だという。

負けるなHさん。無理したら壊れてしまうくらいなら、じっくり時間をかけて考えればいい。
正直に生きて行け。
復興は長くかかる。生きている間に廃炉なんて無理だ。
その責任を回避する為政者と、ひきうけていく次世代を、私は記録したい。

故郷への望郷の念ばかりではなく、この先を生きてゆくあなたたちのことを。

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