「汚染水海洋放出反対!福島の未来を守れ!」浪江町の漁港でエールを送る

請戸漁港

2023年のはじまりに、私は福島県浪江町の請戸(うけど)を訪れた。今年は、福島第一原発からの汚染水が、海に放出されようとしている。請戸漁港は福島第一原発から6キロ。影響は計り知れない。

1月2日朝8時。たくさんの人が海の安全と豊漁を願い、出初式に集まっていた。
神事の後、吉田栄光・浪江町長が「処理水の大量放出など大きな課題に直面しているが、請戸ブランドを後世に残したい。全国に避難している浪江町民が請戸の鮮魚を口にし、町の人口が増えていくよう、漁業に期待している」とあいさつした。

船が出港していくのに合わせて「軍艦マーチ」が流れた。その音楽に入り混じるように聞こえてきたのが「ゴジラのテーマ」、そして聞き覚えのある、あの声だ。
「浪江の人たちは、これからも海の魚を買って食べるだろう。それなのに、汚染水を放出していいのか。汚染水は安全安心だという嘘っぱちの宣伝に、黙っているわけにはいかない!」
浪江町の牧場主、吉沢正巳さんが訴えていた。
「1980年、請戸のホッキにコバルト60が見つかり大問題になった。浜通りのホッキは売れなくなって、5億円の賠償が出た。そんなことをまたくりかえすのか」
「漁師の皆さんも一緒に頑張ろう!これからも福島の魚が食えるように、俺たちも応援します。放射能汚染の魚が出ないように、みんなで力を合わせようじゃないか」

浪江町「希望の牧場」の吉沢正巳さん

郡山市などから集まった人たちと一緒に

かつては150層の漁船、民宿もあって賑やかだった漁場である。2011年3月11日に津波が押し寄せ、たくさんの人が犠牲になった。波が引けて消防団が救出しようにも、原発事故によって立ち入り禁止になり、助けを求める声が聞こえても助けに行けなかった。その無念を忘れていいのか。

汚染水を放出するための海底トンネルが、1キロの長さに延びているのが見える。海底から泉のように湧き上がる状態にし、どこが汚染水の出口かわからないようにするのだろうと、吉沢さんはいう。責任の所在を曖昧にしてきたことが、ここにも貫かれている。

崖の先端から一キロにわたって海底トンネル工事が進む。今年の夏に、汚染水が流される予定になっている。

浪江町の議会では、放出反対の決議が上がっているそうだ。でも、漁協では声をあげられない。「原発まぶりだ」と吉沢さんはいう。
「まぶりって何ですか?」と聞くと、寒いから囲炉裏にあたって暖をとることを「まぶる」というのだそうだ。「原発にまぶって、おいしくなるのを待ち望む、そんな精神構造の地域になってしまったんだ」

北茨城の大津漁港では、100ベクレルを超えたシラウオの加工品が販売されていたことを、漁協の職員二名が内部告発した。その人たちは解雇されたが、解雇撤回の裁判を起こしたのだと、吉沢さんは教えてくれた。

当たり前のことを言う、地元で声をあげる、当事者が闘う。全力でそれを支えたいと思った。

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