
福島第一原発事故から15年目を控えた3月10日。レイバーネットТVでは双葉町民・鵜沼久江さんと、イノベーションコーストを監視する会の和田央子さんをゲストに放送しました。
原発から2・5キロの家に暮らし、牛を飼っていた鵜沼さん。埼玉県に避難してから立ち止まるヒマもなく、新しい土地に馴染もうと、がむしゃらに働いてきました。いつも明るく、笑顔が絶えない鵜沼さんですが、それでも故郷双葉に帰りたい、その思いは消えることがありません。
そんな双葉町も2022年に一部避難指示が解除され、人が暮らせるようになりました。しかし面積にして15%。鵜沼さんの自宅は未だ警戒区域の中にあります。「帰りたいけど帰れないのがみんなの思い。放射能汚染が残っているだけでなく、町の風景がまったく変わってしまった。行くたびに風景が変わっていて、道もわからなくなるほど。いま双葉に戻った人は単身者ばかり。家族で暮らせる環境にはない。あとは何も知らずに移住でくる人たち。でも仕事もインフラもない」。

風景が変わったのは、双葉町だけではありません。一度は人がいなくなった浜通り一帯が、福島イノベーション・コースト構想によって塗り替えられています。これは福島原発事故の復興に見せかけて、先端技術の研究開発をするためのもの。「廃炉」「ロボット・ドローン」「航空宇宙」「スマート農林水産業」「再生エネルギー」「医療」の六部門において、スタートアップ企業を集め、最大50億円の補助金を出すという国家をあげたプロジェクトです。双葉町に誘致された会社も助成金をもらっていますが、桁が違います。
これが福島の避難者、被災者のための復興を考えたものではなく、新たな産業のためだということは明らかです。イノベーション・コーストを政府がさかんに宣伝しています。それによると、ここで研究される技術は、例えば廃炉作業や災害対応のロボットや、インフラ点検用のドローンと銘打っていますが、軍事転用できるものだということがわかります。再生エネルギーも原発に頼らないエネルギーとして研究されるのでなく、浮体式洋上風力発電とドローンをセットにして海に配備し、軍事的に挑発していく計画があります。「戦争のため?まさか」と思うかもしれませんが、ぜひ放送をみてください。
この構想が始まったのは2014年。お手本になったのはアメリカ・ハンフォードです。長崎に落としたプルトニウム爆弾の開発を行い、戦後も核実験のための核兵器を作ってきた町。放射能で汚染され、研究者や労働者が多数被ばくしました。そこから立ち直るために、今度は汚染除去の事業を始め、労働者を呼び集め、一度は5万人まで減少した人口を30万人に増やしたのです。負のイメージを払拭するためには「いかに原爆は正しかったか」という教育が必要で、町の高校の校章はキノコ雲がデザインされています。福島も原発事故をなかったことにし、先端産業のために若者が集まってくる・・・そんな未来を、国は期待しているのです。
和田央子さんの解説に、スタジオから驚きの声があがりました。一番衝撃を受けたのは、鵜沼さんだったと思います。「原発で追い出されて、今度は戦争に使われるなんて」と絶句。それらが福島の復興の名のもとに行われることを、私たちは知っていかなければ。
レイバーネットTVをぜひご覧ください。