四月 渋谷・世田谷での連続上映会を終えて

映画を作るのは大変ですが、それを多くの人に見てもらうのはもっと大変です。
私は相当、運がいいのでしょう。昨年七月に「レイバー映画祭」で上映してもらって以来、観て下さった方が自分の地元やグループ、職場や学校などで自主上映会を開いてくれました。東京・埼玉が中心ですが、札幌・福島・名古屋・山梨・金沢・大分などにも広がっていったようです。

でもまあこの類の映画だから、3・11二周年を区切りに上映会は激減していくんだろうなあ~と思っていたところ、世田谷・渋谷で「連続上映会」をやろう!という話が・・・。なんでもこの地域の人たちは「原発都民投票」をやったり、騎西高校に炊き出しに行ったり、福島の子ども達の保養を企画したり・・・日頃から思いを持って活動している人たちが集まっていたのです!「世田谷から未来をつくる会」「都民カフェ・渋谷」「下北沢+被災地命つなごうプロジェクト」といったグループの皆さんが共同して、この映画を広めるために尽力してくれました。

おかげで、今まであまり関心のなかった人たちも含めて、原発避難民の現状を知ってもらうことが出来ました。同じ地域での連続上映・・・ということもあって、観に来てくれた人が友人に声をかけ、誘われた人が「どれどれ・・」と足を運んでくださる・・。そんなクチコミの力もあって、五回の上映会で220名もの方が観に来てくれました。 三月からシモキタで準備のための会議を重ね、私も時々お邪魔しましたが、スタッフの皆さんの熱意には本当に圧倒されました。ただただ感謝。
世田谷チラシ
五回の上映会を終えて、何と言っても一番の収穫は多くの双葉町民が来てくれたこと。
スタッフの人たちが日頃から騎西高校に来て、避難者に思いを寄せてくれる人たちだからこそ、可能になったことだと思います。

双葉町民を東京に引っ張り出して「原発の町の人たち」と「原発のない地域の人」がシンクロする。原発立地の町の人には黙っていてほしくないという思いがず~っとあったので、これはとても嬉しい一歩だったなあ。

私が双葉町を追いかけようときめたのは「どうせ忘れられていく」という言葉が心にひっかかったからですが、二年経って逆風が吹いたよ~!って言いたい。

映画に出てくる人たちは比較的言葉を発せられる人たちですが、そうではない双葉の人たちも来てくれて「自分たちのことを気にしてくれる人がいることがわかってホッとした」とか、「話が出来て心が楽になった」と。
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二十日の烏山での上映会の時、小林はくどうさん(東京ビデオフェスティバルの審査員)が来てくださっていて、「映画の中で避難民が、自由に語っているのがいい。生きてるなあって感じる」と言ってました。
これは騎西高校という避難所ならではのことだと思います。

将来への不安、政策への不満、日々の愚痴も含めて、自由に自分の言いたいことをいう。これは民主主義の基本だと思いますが、井戸川元町長はそこまで見越して、県外移転を決断したのでしょうか。
そうだとしたらやはり彼は凄い人だと思います。
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今あらためて、騎西高校は貴重な避難場所だった・・。私はこの場所があったからこそ、双葉町民と出会うことができたのです。避難する人たちにとっては厳しい集団生活を余儀なくされるとはいえ、双葉町民もまた同じ町の人々やマスコミ、ボランティアをはじめとする多くの「他者」と出会えたのではないでしょうか。そして二年経った今、人は減り、亡くなった方も増えましたが「自分たちを忘れないでほしい」という声にこたえるものが、この上映会で実現できたとしたら、制作者冥利につきます。

少なくとも「見殺しもされる」ことへの抵抗が、あの映画に登場した人たちの思いであることは明らかで、そういう思いは原発避難民だけでなく、さまざまな人たちが抱えているものなのではないか・・・。

そんなことを、上映会を通じて知り合った方、打ち上げでの討論などで、あらためて感じたのでした。

rge千歳烏山での上映会後の打ち上げ。双葉町民と東京都民が集って、夜中の一時までしゃべりまくり!

以下、寄せられた感想です。

○映画の冒頭にあったように「忘れ去られていく」のが現実だと思うことが多くなり、でも私が折れていてはいけないという思いがあり今日来てみた。
映画の中で年配の女性が、「温かいみそ汁に救われた。」「でも毎日お弁当はねえ」と話していたが、これが現実。
世間で目にするのは、<温かい味噌汁→救われた→よかったよかった>というものばかりで。
映画を観れてよかった。また上映して欲しい。近所の大熊町から避難してる人を連れてきたい。彼女は私よりずっと心が折れているから、どんな映画か心配だったから、今日は迷ったけど誘えなかった。 (南相馬に実家があるというAさん)

○上映会をとおして私の中でも何かが変わったように感じています。
烏山で(双葉町民の)堀井五郎さんと鵜沼友恵さんにお聞きしたお話も、想定を超えたものでした。
一言で言うと、「お二人ともロックだな」と感じました。屈せずに立っている力が。
五郎さんは、打ち上げでもいろいろな状況を語ってくださいましたが、賠償金の話から、東電への疑念から、赤裸々な内容でした。
それは、「避難されている人を助けなければ・・・」という東京モンの青臭い善意を打ち砕く力があります。でも、これが現在の状況だという間違いのない正直な言葉でした。
現状を伝えたい、伝えなければという誠実な思いを感じました。
お話を伺って、私の中で呪縛のような(ボランティアの?)概念が壊れ、助け合いたいという気持ちが生まれました。お二人は、強いですね。そして、すがすがしく魅力的です。
そして、とても人間らしいものに溢れています。わたしも負けずにしっかりしないと、と思いました。
(上映実行委「世田谷から未来をつくる会」・Iさん)

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