「双葉にこだわらなくていい」

 新年になって三週間。双葉町は動き始めています。

 1月8日、9日は、いわき市勿来にある復興公営住宅広場で、双葉町ダルマ市が行われました。二年ぶりの巨大だるま引きや、だるま神輿。福島県内外に避難する双葉町民たちが、懐かしそうに見つめていました。
「双葉町でやれないダルマ市なんて」という人もいますが、違う場所でもいいから伝統行事をつないでいきたいという心意気も伝わってきます。
テントの下には、双葉町長や教育長さんたちもいて、お話を伺いました。「双葉町はこの一年で大きく変わると思う」「”住民が誰一人帰れない町”と言われてきたが、その枕詞がなくなります」とのこと。
 20日には双葉町内での準備宿泊がはじまりました。津波で家が流されてしまった、比較的放射線量の低い中野・中浜地区には、すでにホテルが作られていますが、それ以外で住民が寝泊まりできるのは初めてのことです。
 さらに、10月にはJR双葉駅の西側に復興住宅が完成する予定です。双葉町民でなくても、住みたいという人なら誰でもオーケーだと、伊沢史郎町長は言っています。

 福島県全域から、放射能を帯びた「除染物」を集めた双葉町。誰かが犠牲にならねばと、自分に言い聞かせていた町民もいます。もうこの町で暮らすことはないだろう・・・。
 まだ家が残っているというHさん。前回帰った時は「いつかまた住めるように」と奇麗に拭き掃除までしてきたけれど、今回帰ったら動物のフンがあったり、物が倒れていたり、娘の部屋も荒らされていて。絶望的だったと私に話してくれました。片時も忘れたことのない我が家だったけれど、もう双葉にこだわらなくてもいいんじゃないか。
 電話口でHさんの話を聞きながら、大切なものを奪われた人の強さを、垣間見た思いがしました。

 動物のフンを片付けて、除染して、リフォームでもして、我が家に住めばいいじゃないかと言う人もいるでしょう。会社が誘致され、大震災と原発事故の資料館が出来、駅がリニューアルしている町なのですから。「復興」に向けた準備は着々と進んでいるようで、町長は「どんどん居住者を増やせると確信している」と言いますが、私は、町民の気持ちから乖離していると思います。

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