そんな地道なやり方で、ご近所の人に呼びかける。
横浜市綱島は、古くから鶴見川が氾濫し、洪水の被害を受けてきた。そこで生まれ育った私の友人が、小学校の体育館で上映会を企画してくれた。
昭和30年代までは三年に一度水害にあい「『綱代に嫁に出すな』と言われていた」という。そんな中で水害対策住民組織をつくり、森づくりを含む治水にむけて地域をまとめ、防災意識を高めてきた人たちがいる。その歴史を子どもたちにも伝えようと、戯曲まで作ったという元教師の飯田助知さんらを交えて、愛着ある地域を守るために何をすべきか考えようという企画となった。
綱島小学校の体育館には、ほぼご近所とみられる方々が130人集まってくださった。同じ地域と言っても顔見知りの人もいればそうでない人もいる。双葉町が経験したことは、今ここにいる綱島地区の人たちが、そのままこの体育館で共同生活を続けるということなのだ。でもそれだけじゃない。双葉町は故郷からひきはがされた。そして、原発の町ということで差別をうけている。それがどれほど大変なことか。
地域を愛し、子どもを災害から守ろうとする意志をもった大人たちに、愛着ある土地を奪われ、共同体が分断されていく双葉町がどのように映ったか。・・・「一人一人が決断しなくてはならない」と、飯田さんは静かにおっしゃった。
会場には双葉町で生まれ育ったという人も来てくださっていた。その中の一人の女性が言った。
結婚して双葉町を出る時、父に「お前を疎開させる気持ちだ。この町にずっといたら、何が起こるかわからないから」と言われた。その言葉の意味が、この映画を観てわかった気がします、と。
たった一人で上映会をやろうと走り回っていた友人だったが、どんどん協力してくれる人が増えたみたいだ。成功させるために、皆が尽力してくれていた。印象に残る上映会だった。