島根原発のおひざもとで②

 福島原発事故以来、全国にある原発立地の地元では「早く再稼働せよ」という声が多いと聞く。それほどに原発はカネと雇用をまき散らし、地元の人を縛り付けてきたのだ。
 福島の人たちが事故以来どんな行く末をたどっているかを知ってほしい。・・・そう願ってきたが、原発が立地する町で『原発の町を追われて』を上映することがようやく叶った。

 全国で唯一、県庁所在地に原発がある島根県松江市。昨年末の島根県出雲市での上映をひきついで、今回は原発を抱えた「その町」での上映だ。福島原発の次(1974年)に、国産原子炉として初めての稼働が始まった。「県名がそのまま原発の名前になったのは『福島』と『島根』だけ」。良くも悪くも、福島からの声を聞きたいという人が多いのは、当然のことだと思えた。

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 6月21日『島根原発三号機~訴訟の会』『松江キネマ倶楽部』の主催で三回上映され、130人もの方々の参加があった。
 一緒に映画を観ながら私は熱いものがこみあげ、いつになく涙があふれた。観ている人たちが、ここに映し出された双葉町の人たちと自分たちを重ね合わせてるのを感じたからだ。

 車椅子の男性が「私の地域は、事故が起こったら岡山に避難することが決まっている。でも私は松江が大好きで、ここを離れたくない」と語った。
「島根県は人口70万人。中国電力が原発なんか作らんでも、電気はたりちょるんよ」。
 かつて祝島を訪ねた時と同じような声が聞こえてくる。

 松江城や夕日の落ちる様が美しい宍道湖。夕方七時には店じまいしてしまうこの町の、どこかほの暗い雰囲気が何ともいえなくよかった。故郷を奪われるというのがどういうことなのか、我が身に置き換えて考える人の多いことを、束の間の滞在の中であっても、肌身をもって感じることができた。第二の福島になってほしくない。
 
 それでもこの町の少なからぬ人は「事故は起こらないだろう」という。それはかつての双葉郡の人たちの姿でもある。 
 事故が起こる前ならいざ知らず、福島は重大事故の被害を被った。悲劇は一度でいい。「私たちの苦しみを二度と経験してほしくない」という双葉町民の思いを、島根の人々に浸透させたい。

 志をもって上映会を準備してくれた人たちと、観に来てくれた130人の人たちから始まっていくんだ。

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松江 毎日新聞

 

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